「十三怪談 (旧 七怪談)」のすずな(日本人形)のエンディング全文の公開です。
古びた焼却炉の、扉が閉じられる音と共に、
”すずな アナタハ…要ラナイ”
自分の声を聞いた。
クローゼットの隙間という隙間から、黒い髪が伸びていた。
声は出せなかった。
…後日、女性の変死体がみつかった。
首には爪で引っ掻いた跡が見られ、胃の中から大量の黒い髪が出てきた。
背後に、声を聞いた。
”す ず な 忘れたか”
…後日、アパートの一室で女性の惨死体が発見された。
ほどなくして隣人の男が逮捕される。
”贈ったものを捨てられ、裏切りに感じた”
と動機を供述しており、長きに及ぶ計画的犯行と見て捜査が進んでいる。
ときどき、夢に人形達が現れてこう言う。
”いちばん あいして”
「う―ん……驚いた、ピッタリだね。」
想像以上にドレスが似合っていたせいか、思わずその仕上がりに満足した笑みが浮かんだ。
「それ、私の、自信作なんだからね…。ふあ、眠い…。」
時間は0時を回っている。
眠りに落ちる瞬間、日本人形が笑っているように見えた。
…翌朝。
すずなが目を覚ますと、赤いドレスが枕元にあった。
部屋のどこにも、日本人形はいなかった。