「十三怪談 (旧 七怪談)」のひろえり(きさらぎ駅)のエンディング全文の公開です。
えりが過ぎ去った場所に、さびれた看板がひとつ転がっていた。
暴れるえりを押さえ込むようにして、白衣の男はえりの首に針を刺した。
意識を手放す最中、知らない言語が聞こえたような気がした。
「……たぶんここも知らない」
左右反転文字の標識が目に入った。
「………あれ、」
「私の名前、なんだっけ。」
家に入り、キッチンに立つ祖母の小さな背中に声をかけた。
「ただいま、おばあちゃん。お母さんは?」
「………えり?」
振り返った祖母の驚いた顔を見て、えりもまた目を見張る。
「……うそ……。」
頬がこけ皺が刻まれた顔に、
母の面影を見た。
「お母さん……今日、何日?」