「十三怪談 (旧 七怪談)」の沢口(ヤマノケ)のエンディング全文の公開です。
運転席に、娘の笑う顔を見た気がした。
……。
後日。
山で男性の遺体が発見され、
その先の崖下で、転落したとみられる乗用車がみつかった。
「おいっ野郎!!!!
さよに近づくんじゃねえ!!!!!」
大声を張り上げると化物はフッと消え失せ、
娘が跳ね起きた。
「あ、悪いなさよ―」
起こしてしまったことを、娘に謝ろうとしたときだった。
「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」
娘は”はいれた”ということばを繰り返し
ニタニタと恐ろしい顔で笑いだした。
……。
「どうして、さよなんだ………。」
数か月経った今も、娘の顔はあのままだ。
「右見て、左見て…」
目が合うまで、あと二秒。
「…さよ?」
粟口は声を聞き取ろうと、
扉に耳をあてがった。
「…………テン、ソウ……」
「そうだ、ママは何が食べたい?」
妻は答えなかった。
「お父さん、オムライスがいい!!!」
「わかったわかった、父さん腕によりをかけて作るからな。」
『ヤマノケが憑いている間はご家族で来ないでください。
女性に取り憑きますから。』